VR技術で治療の不安や痛みに立ち向かう xCura代表 新嶋祐一朗氏へインタビュー

目次

こんにちは、MatchXRs 小磯です。

今回は、インタビュー第3弾。
インタビューイはVRを活用し、治療中に痛みや不安を和らげる『XR Therapy』を開発されている株式会社xCura代表 新嶋さんです。

学生時代より、治療現場における「人の感じる痛みや不安」に強い関心を持ち、終末期医療や催眠療法の研究に従事。2020年よりVRディストラクションと出会い起業。XRとヘルスケアの新たな可能性を感じさせられます。

新嶋 祐一朗(にいじま ゆういちろう)

株式会社xCura代表。
『テクノロジーによる、痛み・不安の軽減』という理念をもとに、VRによる、治療中の痛み・不安の軽減、及び痛みの定量化に取り組む。現在は、歯科クリニックをメインにプロダクト提供を行っている。2021年12月にサービスリリースを予定しており、すでに歯科クリニックだけでも20以上の医院が導入を希望している。

Twitter @Niijima_xCura

xCuraの事業内容


小磯:新嶋さん、本日はありがとうございます。早速ですが、事業の詳細をお伺いしても良いですか?

新嶋:治療中の痛みや不安を軽減することを目的としたVRセラピーのサービスを展開しています。現在は、歯科クリニックにて実証実験を実施しており、リリース後は歯科を中心に産婦人科、医療脱毛クリニック、泌尿器科、ホスピスなどに展開予定です。

ビジネスモデルとしては、VRゴーグルごとお貸しして、クリニックから初期費用と月額費用をいただきます。病院側は患者さんにXR Therapyを提供し、利用料を請求することも可能です。患者さんからの使用料はクリニックの収益となります。患者さんから使用料を頂くかどうかは、それぞれのクリニックの判断にお任せします。また、混合診療には該当しません。



XR×治療の領域に携わるようになったきっかけ


小磯:XR×治療に領域に携わることになったきっかけはなんですか?

新嶋:VRにこだわっているのではなく、痛みや不安にこだわっています。

大学在籍時に哲学科に所属しており、スピリチュアルペイン(終末期医療における精神的な痛み)に興味を持ち研究していました。

ただ、なかなか哲学的なアプローチだけでは人の痛みの解決ができないと考えていたときに、大学で催眠を研究している教授と出会いました。その方は催眠療法によってガン患者の痛みを軽減していました。


それに感銘を受けて、2014年から私自身も催眠療法士として活動をしていたんですね。

その時から、催眠とVRはもの凄く相性がいいと感じていました。


小磯:へえ〜そうなんですね!

新嶋:催眠というのは暗示によって何かをイメージしてもらいます。まさにそのイメージすることがVRでその場にいる感覚ととても似ていて、同じようなことができそうだなと考えていました。


そんななか、2020年にプログラミングを本格的に学ぶ機会があり、そこでVRディストラクションという、VRによって痛みを軽減する手法があるというのを知りました。

まさに自分の興味である「痛み」、あとは自分が知見を持つ「催眠」をVRに活かせるなと思い、プロダクト開発を始めたというのが一つのきっかけでした。


小磯:VR×治療が親和性あるなと思ったのはいつ頃なんですか?

新嶋:催眠を学んでいたので、2013年ぐらいからですね。


小磯:え〜すごいですね!

新嶋:その時も、VRのことはなんとなく知っていて、VRと相性いいかもなということはそのとき大学の先生方とも話していた気がします。


小磯:医療系も知見あるし、プログラミングもできるし、マネジメントもできるしつよつよですね。

新嶋:プログラミングは初心者に近いですけどね。(笑)


小磯:ありがとうございます。

余談ですが、*幻肢痛の治療にVRの技術が使われているという話を聞いたことがあり、そういう領域こそが真に人々の課題解決に直結する内容だなと思っていました。

*幻肢痛
手や足を失ったり、手や足の神経が損傷して感覚が全くなくなったりしても、障害された手や足が未だあるように感じられることを幻肢覚と呼び、さらに、この幻肢が痛むことを幻肢痛と呼ぶ。手や足を失った人の約50~80%で幻肢痛が生じる。
(引用:国立大学法人大阪大学, 「―失われた手の痛みをなぜ感じるのか?―念じると動く義手で幻肢痛のコントロールに成功」, 2016, https://www.amed.go.jp/news/release_20161027.h6tml


新嶋:そうですね。幻肢痛の治療には、残っている手を鏡に映し、自分が両手があると脳に認識させて痛みを和らげるという療法があるんです。それをVRで置き換えることにより、本当に腕があるように感じられるというのが一つの導入メリットかなと思います。


小磯:本当ですね。



現状の抱える課題


小磯:その辺のお話も聞きたいのですが、次のご質問としまして、御社として困ってることなどをうかがってもいいですか。

新嶋:人が足りないです。現在、実証実験の時は私が患者さんの横で立ちあってるんですね。

ただ、患者さんと私の予定が合わないと、実証実験ができないんです。


小磯:確かにそうですね。
新嶋:お医者さんから、「この日親知らずの患者さんが来るよ」と言われても、それに対応できなかったりする。


小磯:最低でも3者の日時を合わせないといけないということなんですね。

新嶋:そうなんです、そこが難しくて。
アルバイトの方でも採用したら、その辺りの課題は少し軽減されるのかなとは思いますね。

とはいえ、体力があっても、アルバイトの方の業務コントロールが難しい。

常に実証実験がある訳ではないので、実証実験がない日はどうするかという課題もありますし、今私がやっているお医者様やVCの方々とのやりとりは代替してもらうことが困難で。


小磯:確かに。オンラインで完結するものならまだしも、現場に3者が集まらないといけないというのは、さらに日程調整の難易度が上がりそうですね。

新嶋:なかなか難しいですね。
一応VRゴーグルとアンケートをお渡ししてクリニックだけで行っていただくこともできなくはないのですが、やはりアンケートでは直接みたり聞いたりしないと拾えない声もあるので...そこが目下の課題ですね。


小磯:スタートアップあるあるかもしれませんが、人も足りないけど、ある程度自走するマインドの方じゃないと、いうのもありますよね。

新嶋:そうですね...かつ、患者さんとのやりとりになるので、ある程度見た目や対応もきちんとしていないといけない。


小磯:新嶋さんご自身がめちゃくちゃきちんとされてますもんね。

新嶋:実は私も実証実験をするまでは、鎖骨あたりまで髪の毛があったんですよ。


小磯:え〜そうなんですね〜!
新嶋:そうなんです。でも実証実験をするにあたって、バッサリ切りました。


小磯:そうだったんですね。

新嶋:学生の方だと患者さんによっては不安に思う方もいるので、ある程度社会人経験のある方じゃないと、患者さんとの受け答えが難しいんじゃないかなと思うところもあります。

その辺り、誰を採用するかは悩ましいですね。


小磯:企業さんの業種業態によって、人だけじゃない求められるリソースって異なりますもんね。今の困ってることへの代替策は社内のリソースでまかなっていらっしゃるんですか?

新嶋:そうですね、うーん...資金調達ができたら、逆に正社員として増やせるので。


小磯:逆にそれは人じゃないとダメなんですか?既存のサービス使うなどには限界があるんでしょうか。

新嶋:そうですね。どうしても治療中の場に行かないといけないので、サービスどうこうというよりも本当に人が必要ですね。



XR業界の今後について


小磯:ありがとうございます。次の質問ですが、XR業界の今後を新嶋さんはどう見てらっしゃいますか?

新嶋:2016年がVR元年と言われ、なかなかそこから拡まらなかったですが、2020年にクエスト2が発売され、やっとギークだけじゃない一般消費者にも徐々に普及して来たなと感じます。

メタバースという言葉が今年になって流行ってきましたが、絶対に今後伸びる業界ではあると思うので。

VRといえば主にゲームのイメージが強かったと思うんですが、それこそコミュニケーションツールとしてはもちろんヘルスケアの領域など、ゲーム以外の色んな領域で広がっていくことが期待できるのではないかと思います。


あとは使いやすさの観点から、流れとしては先にARの方が来るのかなとは思っています。

VRだと少し重量があり、かつ子供が利用すると斜視になる可能性があるため使いにくい。ですが、ARであれば軽くて使いやすく、現実世界が見えるので外で使っても危険性が低い。ARが来てその後にVRが遅れてくるのかなと予測しています。


小磯:先にARで後からVRということですね。

引用元をど忘れしたんですが、*2030年にVRは1兆3000億でARはその10倍の13兆の世界規模になるというデータを見たことがありました。

*見つかりました!
スマートグラスの世界市場【AR表示機器】
ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の世界市場【VR表示機器】
(引用:株式会社富士キメラ総研, 「『AR/VR関連市場の将来展望 2020』まとまる」, 2020, https://www.fcr.co.jp/pr/20088.htm

新嶋:また、数年後はVRとARを一つのゴーグルで見れるようになるかもしれませんね。今現在、Lynxなどはありますけど、少しゴツいのでそれが将来的にはメガネみたいに本当に軽くて、ARもVRもどっちも体験できる、みたいなものができるかもしれないですね。

小磯:確かに、金額なども下がって手に取りやすくなるかもしれないですよね。



これからXR業界を目指す方へ


小磯:これからXR業界への就職などに興味関心がある方や、弊社に対しての応援メッセージなどでもいいんですけど(笑)そういったものがあったらお願いします。

新嶋:XR業界を目指す方に向けて、ですね。

そうですね、まずはとにかくXRに触れて、ここがすごいと思うポイントを自分で感じるのがいいんじゃないかなと思います。そもそもそういう人じゃないと就職や転職を目指さないとは思うんですけど。


小磯:ええ。

新嶋:なんとなく、XRがこれから流行るからという理由でエンジニアを目指すというよりも、自分で触ってみて「こういうのがすごいやりたいんです」という経験があった方がモチベーションになるのではないかなと思います。


それを元にキャッチアップ、勉強して欲しいなと思いますし、これはエンジニア全般に言えることだと思うんですが、とにかくデプロイすることが重要かなと。

結構、勉強はしているけれども、表に出さない人が結構多いと思うんです。


小磯:確かに。

新嶋:どんな汚いコードでもいい、手段もツイッター等SNSでもなんでもいいので世に出し続けることが大切だと思います。そういうのがあると、採用する側から見ても「ああ、ちゃんと勉強している人なんだな。」というのがわかるから。


あとは、御社へのメッセージということですね。


小磯:あったらで大丈夫です。(笑)

新嶋:今回、XRのエンジニアを探したり開発チームを整えるのにものすごく苦労したんですね。

やはり、XRエンジニアがなかなかいない。いても引く手数多で時間がない方が多いですし、地方ではXR専門でやってる人がいない。

例えば、会社でもXR領域の業務をやっているけれども、8割はゲームを作っていて、残り2割はXRをやっていますといったような方がほとんどである印象を受けます。XR専門でやってる会社も少ないですし、人も少ない。そんな中で人を集めるのがとても大変でした。

XR領域に就職、転職したい方向けの採用プラットフォーム等があればすごく助かりますし、エンジニアだけではなくアーティストもそうですね。VRアーティストになると母数がもっと少ない。探すのがすごく大変でした。


小磯:御社は、総動員してプロダクトを作っていらっしゃいますもんね。

新嶋:そうですね。特に弊社の事例でいうと、元々はQuillというペイントツールを使いたかったのですが、世界的にもそういう方が非常に少なくてですね。相場もできてないので、アーティストの方に頼もうとすると1分で100万弱ほどかかりますと言われたり...


小磯:高っ!(笑)

新嶋:まあイギリスの方だったんですけども、相場がそもそも高めということもありまして。なので、日本でそういう...経験者じゃなくてもいいので「Quillとかを使って何か描きたいんです」というVRアーティスト希望の方などにはアプローチできるといいなと思います。ですので、ぜひ頑張っていただきたいです。


小磯:頑張ります。



xCura CEO 新嶋さんからメッセージ

小磯:最後にxCuraさんのPRやこういう人探してますみたいなのがあればぜひお願いします!

新嶋:人でいうとVRアーティスト、Quillを使って学びたい人を探しています。

現時点でQuillができている必要はなくてですね、むしろ弊社で育てようというくらいに思っていますので、興味のある方はぜひxCura新嶋までご連絡ください。リモートでも可能です。

お問い合わせは以下。


コーポレイトサイト

新嶋CEOのTwitter  @Niijima_xCura



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